おまえ、死んだのか

逞しく生き抜いてきた雑草がこれからも生き抜く過程

暗い歌


がんばれとか、笑えとか、辛いのは今だけとか、皆待ってるとか、励ましの言葉を散々貰った子供時代の入院期間でしたがその時私を一番救ったのは友達がくれたド暗い音楽でした。


その友達は元々すこしパンク系で、私から見たらあたたかい家庭で育ったのにどうして趣味がサブカル系なんだろうと不思議でした。

当時の私はTVから流れる明るい歌が「歌」だと思っていたし、彼女が聞くような暗い歌は聴いてて何が楽しいんだろう?暗い気持ちにはならないのかな?と思っていました。



しかしいざ入院すると、明るい励ましの言葉はちっとも私を癒してくれず、むしろ健全に生きていけてるアナタが私に何を伝えるって言うんだ!と反抗的な気持ちにさえなりました。

担任も、私にクラスメイトが心配しているだとか、今は皆でこんな事をしているだとか、私が得られないものの話ばかりして、そのクラスメイトに◯◯されて入院する羽目になった私を見ろ!と、そして伝えろ!と怒りがぐつぐつと湧き上がりました。

11歳という群れで生活していた私は何もしていない、ただみんなと同じように過ごしていただけなのに力の強い馬鹿がそれを自覚せずに私に致命傷を負わせた。普段は仲が良かったからイジメではない?それはそうかもしれないがこれは傷害だ!暴行だ!と叫びたい気持ちだった。

しかし噴火して◯◯部分を動かせば神経にさわると固定されて何も出来ない。

なんだか皆キラキラした話をして、帰って、また眩しい話だけ持ってきて私から「はやく皆と会いたいな」という言葉だけを待つ。

そういう日々だった。



だから腕だけを動かして出来ることといえば彼女から借りたCDを録音したMDを再生する事でした。

今までまともに聴いた事がなかった暗い歌。

歌手はCocco

歌詞を聴き込めば聴き込むほど暗い気持ちになる。自傷行為や死を連想させる言葉も多かった。でもなぜかボロボロと涙が出て、頰が涙の熱で火照るくらい泣いて、鼻水で鼻も詰まって、それでも聴く事をやめられなかった。

油性ペンが油に溶けるような、私が膨らませていた不条理へ対する怒りが同じような歌詞とともに溶けて、それが泣くという行為で外に排出されている気分。

どんな言葉より励まされて、どんな人より心強くて、体は11歳なのになぜか大人になったような万能感や肯定された気分にもなって、退院するまで夜になるたび聴いていました。



ある日担任が持ってきた3匹の犬のぬいぐるみ。

「これで寂しくない。ワンワン!僕達に名前をつけてよ!」

と迫られたので、陸海空と名付けました。

自衛隊みたいな名前だね」と言われて、私は確か何も言い返さなかった。

犬は昔から嫌いで、陸海空は私の大嫌いな父親がかつて所属していた自衛隊の意味と、陸と海と空なんて大きな地球の3大要素なのにお前たちは私に何も与えられないという皮肉で付けました。


退院して、色々あって家を出るときCoccoの音源は持っていったけど犬は置いてきました。

あの後捨てられたのかな、それとも父親の最期まで部屋にあったのかな。

私のための犬だというならあの世で父親に噛みついてくれ。